View on GitHub

Nishiawakura_FM_Documents

西粟倉村の森林管理に関するドキュメントです。

西粟倉森林管理計画書

方針と目的

 西粟倉村の森林管理者は、森林の多面的な活用と持続的な経済循環が行われる「上質な田舎づくり」を目指す。これは平成18年に西粟倉村で着想された「百年の森林構想」に依るものである。「百年の森林構想」では、「50年生まで育った森林をあきらめず、村ぐるみであと50年がんばろう。そして美しい100年生の森林に囲まれた上質な田舎を実現していこう」というビジョンを掲げている。西粟倉村の森林管理は、このビジョンをもとに執り行なう。

森林管理認証

 本計画では、森林管理協議会(FSC®)の森林管理認証(FM認証)を取得し、その原則と基準に沿う方針で管理を行なうこととする。FSCは、環境保全の点から見ても適切で、社会的な利益にかない、経済的にも継続可能な森林管理を行なうことをその旨としており、本計画の目的と合致する。

対象

 本計画書の対象は、「百年の森林事業」にて長期的な施業管理の委託を受けた森林とする。「百年の森林事業」は「百年の森林構想」の下に行われる村の事業であり、森林整備から製材や木材加工までを一体的に村内で循環させることで、長期にわたり安定的な森林管理を可能とするものである。管理区域の地図は「西粟倉森林管理地図」として閲覧できる。

自然の状況

 西粟倉村は岡山県の東北端部に位置し、中国山地の南斜面に開かれた谷間の山村である。本村は吉井川水系の支流である吉野川の源流部にあり、村の中央を吉野川が流れている。これに沿って細長い平野部が広がり、農地と集落が形成されている。山林においては1960年頃の拡大造林時代を契機としてスギやヒノキの人工林面積が広がっており、詳細は「西粟倉村林相区分図」で確認することができる。村内の人工林はほとんどが1960年頃に植林されたものである。

その他評価状況

多面的機能

 森林は、木材の生産のほか、水資源の確保、洪水や土砂崩れの防止、森林レクリエーションの場の提供など、私たちの暮らしと深いかかわりをもっている。また、地球環境の保全が国際的な共通課題となる中で、二酸化炭素を固定し、地球温暖化の防止や循環型社会の構築に寄与する森林・木材の役割が改めて見直されている。特に、西粟倉には水源涵養機能を目的に保安林の指定を受けている山林が多く存在する。また、民家が近い地域では山地災害防止機能・土壌保全機能の発揮が求められる。

社会的資源

 森林へのアクセスは、若杉天然林を除いて積極的には奨励されていない。若杉天然林には歩道や看板が整備されており、自然を活かした観光資源として誰でも利用可能であり、宣伝されている。しかし地域住民が森林に入り、非木材林産物を収集することは制限されていない。布を染めるためのヒノキの皮、薪、杉玉用のスギの葉、シカ肉販売用の狩猟・罠、きのこなどが、地域社会で活用される資源である。文化的資源については、祠などが村内に点在しており、森林整備とともにその状況が確認されている。

社会環境リスク

 様々な人間活動や世界的な気候変動などにより、野生動植物の生息環境は影響を受けている。西粟倉村においても野生動植物が絶滅の危機に瀕しているものもあるため、岡山県版レッドデータブックをもとに保護活動を行なうことが求められる。なお、レッドデータブックに掲載される地図には、目撃地点が記載されているが、縮尺が小さすぎて有用ではない。それらの種は村の森林全体で発見されうると示されているため、西粟倉では全ての森林においてそれらの種がいる可能性があると仮定することが望ましい。

生態系と原生林

 全ての森林は多様な生物の生育・生息の場として生物多様性の保全に寄与している。このことを踏まえ、森林生態系の不確実性を踏まえた順応的管理の考え方に基づき、時間軸を通して適度な攪乱により常に変化しながらも、一定の広がりにおいてその土地固有の自然条件に適した様々な生育段階や樹種から構成される森林がバランス良く配置される必要がある。とりわけ、若杉天然林に見られる原生的な森林生態系については、生物多様性保全機能の維持増進を図る森林として保全が求められる。また、野生生物のための回廊の確保にも配慮した適切な保全を推進が必要である。

病虫獣害対策

 森林の管理におけるリスクとして、西粟倉村では「カシノナガキクイムシを媒介とするナラ枯れ」(ナラ枯れ)、「ニホンジカによる食害」(シカによる被害)が増大している。ナラ枯れについて、ナラ菌及びアンブロシア菌の増殖を薬剤注入により阻害することを基本的な対策とするが、化学農薬の使用頻度・使用範囲・使用量の削減を目指し、その他の対策方法についても随時検討、実験を行うこととする。シカによる被害について、シカ柵による防除を基本的な対策とするが、これはシカの個体数管理には繋がらず根本的な対策とはならないことに留意する。そのため、林内における狩猟圧の増加など、その他の対策方法についても随時検討、実験を行うこととする。

保護価値の高い森林

 西粟倉村では「種の多様性」「景観レベルでの生態系とモザイク」「生態系と生息・生育域」「不可欠な生態系サービス」「地域社会のニーズ」「文化的価」を評価軸として、保護価値の高い森林を指定している。保護価値の高い森林については、森林管理協議会(FSC®)のFSC-STD-JPN-01.1-2020aを参照し、5年おきに再評価を行う。現在指定されている林分については以下の通りである。

管理計画

 西粟倉村の森林管理者は、村の「百年の森林事業」に基づき、西粟倉村内の森林につき集約化を進め、森林管理を行なう。集約化は、森林管理業務につき長期的な委託契約を結ぶことで行なう。集約した森林の管理については、森林経営計画を樹立し、それに基づき管理する。具体的な森林整備については、「百年の森林づくり事業 施工基本仕様書」を作成し、その内容に基づき行う。典型的な伐採方法や使用機器などはFSCの原則および基準を遵守するために設定され、それらは仕様書にて指定する。
 計画においては、法令の遵守、労働者の持つ社会的・経済的福利の維持6または向上、地域社会の持つ社会的・経済的福利の維持または向上、森林のもたらす便益の維持または向上、管理区画の多面的機能の維持保全または復元、管理区画内における高い保護価値の維持または向上、そしてそれらの適切なモニタリングおよび評価など、森林管理認証における基準を厳守する。管理の中で絶滅危惧種等が発見された場合、保護を行うための手順を管理責任者が立案する。 環境への負荷を低減するための河川周辺のバッファゾーン設定など、管理、特に施業の設計において社会的・環境的・文化的に留意すべき点については施業前チェックリストにて確認するものとする。

達成目標

 西粟倉村の森林管理者は、上記の管理方針に基づいて立案される、下記目標の達成を目指す。これら目標の進捗確認や評価については、定期的なモニタリングを実施する。モニタリング内容は、「西粟倉森林管理モニタリング表」に記載する。

労働者

 西粟倉村の森林管理者は、労働者の権利、労働安全衛生、男女平等についての教育・告知機会を年間で1回以上設けることとする。教育は関係する全ての事業者に対して行われるものとし、その記録を残すものとする。安全性については、施業監督のほか「安全チェックリスト」「作業日誌」にて管理される。

森林整備

 年間で総管理面積の2%以上について森林整備を行なう。なお、年間の皆伐面積の上限はスギにつき18ha、ヒノキにつき16haとする。これら上限値は、2017年の調査結果によるものである。整備がFSCの原則および基準に基づき行われていることは、設計内容においては「施業前チェックリスト」にて管理され、実際の施業においてそれらが遵守されていることは施業監督により確認され、その内容は「監督日誌」にて記録される。

木材収穫量

 年間の森林整備面積に対して、1ヘクタールあたり平均10立米以上の伐採木を搬出する。

地域社会との連動

 西粟倉村の森林管理者は、年間で1回以上、地域住民が参加可能な森林整備にまつわるイベント・説明会を開催する。それらにおいて、関係者は管理活動に関するあらゆる意見や要望、苦情などを森林管理者に伝えることができる。森林管理者は、内容に応じて協議などの対応を行なう。

施業活動の中止

 大規模な紛争、長期に及ぶ紛争、非常に多くの利害が関係している紛争がある場合には、施業を中止する。紛争に解決にあたっては、管理責任者を窓口とし、西粟倉村役場を含む関係者による協議により行うものとする。

管理責任者

 本計画およびFSC認証の管理責任者は、「西粟倉森林管理責任者情報」に記載する。なお、管理責任者を変更する際は、管理責任者が後任者に本計画書およびFSCの認証につき説明し、確実な引継ぎを行なうための期間を設ける。管理責任者は、いかなる贈収賄行為にも関わらない。
 なお、関係者は、管理責任者に対して「西粟倉森林管理責任者情報」に記載された連絡先より、いつでも森林管理のあらゆることについて意見や要望、苦情などを伝えることができる。管理責任者は、内容に応じて協議などの対応を行なう。なお、FSCのグループ認証に関する規定については別途「グループ管理規定」にて定めるものとする。

情報公開

 本計画書は、インターネットにて公開される。なお、ウェブサイトに公開されているものが最新とする。2021年度以降のものにつき、過去のバージョンや変更点はGithubにて確認が可能である。