百年の森林づくり事業 施工基本仕様書
序文
西粟倉村の百年の森林づくり事業は、2009年当時に50年生だった人工林をあと50年村ぐるみで手入れし、豊かで美しい森林をつくっていく事を目指して始まりました。百年の森林づくり事業の目的は、後世に生きる人達の為に環境保全の観点から見ても適切で社会的な利益に叶い、経済的にも持続可能な森林をつくる事です。本仕様書は、それを具現化する為に策定された最低限守るべきルールです。事業に関わる全ての関係者は、後世に豊かで美しい森林を残すという共通意識のもと、努力を惜しまず、西粟倉村の林業振興並びに災害に強い森林づくりを目指します。
1.基本仕様書について
1-1.仕様書の目的
百年の森林づくり事業において施工者が守るべき基準をこの「百年の森林づくり事業 施工基本仕様書」(以下「本仕様書」)として取りまとめる。百年の森林づくり事業における作業は特記仕様書による別途指定の無い限り、本仕様書に沿って行われる。
1-2.仕様書の変更
発注者は、4月1日、7月1日、10月1日、1月1日のいずれかの日、もしくは、本仕様書に基づく作業中の施工者全てが合意した場合は直ちに、本仕様書を改定することができる。施工中に改訂された場合は、改定後の仕様書に基づき施工する。ただし、施工中に改訂された場合は、施工者が改定後の仕様書に則ることに合意した場合を除き、発注者は、作業着手日時点での仕様書に基づき施工者の評価を行う。
1-3.仕様書の変更に関する協議
施工者は、事業の実施において本仕様書に修正すべき点や疑問点が発生した場合、発注者との協議を申し入れることができる。協議の結果により必要が生じた場合、発注者は新たに特記仕様書を作成する。特記仕様書は、当該団地にのみ適用される。
1-4.不明点の報告
施工者は、事業中に仕様書に指定の無い事項など不明点が発生した場合、直ちに発注者へ報告する。また、発注者との協議が行われるまでは状況の保全に努める。
2.事業体と担当者について
2-1.事業体登録
全ての事業体は事業体登録を行い、所有または管理する重機の一覧と作業員全員の氏名、保険加入情報及びアレルギー検査結果の一覧を株式会社百森へ提出する。また変更があった場合には速やかに変更後の情報を提出する。
2-2.事業担当者
施工者は、事業担当者を選任し、事業担当者届出書を株式会社百森へと提出する。事業担当者は本仕様書が遵守されるよう施工及び施工の指導を行うほか、株式会社百森との連絡を担当する。
2-3.事故災害等の報告
事業担当者は、事業中に不明点、もしくは事故、災害、クレームなどが発生した場合、直ちに発注者へ報告し、発注者の指定する様式により報告内容の記録を行う。また、状況を示す写真を近景、遠景のそれぞれ1枚以上ずつ可能な限り速やかに撮影し発注者と共有する。
2-4.手直しの指示
発注者は、本仕様書に基づく手直しなど指示を行うもしくは行った場合、指示の内容を記録し、事業担当者へその記録の写しを通知する。事業担当者は、指示の内容に従い、手直しなどを行う。本仕様書に基づかない手直しなどが発生した場合、発注者と施工者は、両者協議の上対応を決定する。
3.下請負について
3-1.下請負の範囲
施工者は、その請け負った事業を、いかなる方法をもってするかを問わず、一括して第三者に請け負わせない。
3-2.下請負の通知
施工者は、事業の一部を下請負にどうしても付さなければならない場合、その旨を理由とともに発注者へ通知する。
3-3.下請負への発注
施工者は、下請負契約を締結した場合には、下請負届出書と契約書の写しを株式会社百森へと提出する。事業担当者は、下請負先が本仕様書を確認するよう、また、作業が本仕様書に沿って行われるよう、下請負先に指導し、下請負先が行う作業であっても施工者が行うのと同等の義務を負う。
4.施工期間について
4-1.施工開始
施工者は、施工の契約締結後14日以内に作業に着手し、作業着手届を発注者に提出する。
4-2.施工完了
施工者は、工期期間中に作業を終え、作業完了届を発注者に提出する。
5.施工記録について
5-1.日報アプリの記入
施工者は、作業を実施した日は日報アプリに作業内容を記入する。
5-2.施工中写真の提出
施工者は、各作業工程について、監督員から指示のあった形式に基づき施工中写真を撮影し、その画像データを発注者に提出する。
6.現地確認について
6-1.現場説明
事業の受託を希望する者は、見積り提出前に事業地の担当者による現場説明を受け、設計条件を十分に把握するものとする。
6-2.現地確認
事業を受託した場合、事業担当者となる者は、作業着手前もしくは着手時に発注者との間で現地において施工内容について認識の擦り合わせを行い、誤伐などのトラブルを未然に防止することに努めるものとする。
7.安全への配慮について
7-1.安全管理
施工者は、常に作業の安全に留意して作業を行い、災害防止に努める。また、労働安全衛生法等関連法令に基づく措置を常に講じる。林業機械の運転および管理についても、関連法令に基づいて適切な措置を講じる。
7-2.安全チェックリスト
施工者は、安全チェックリストによる安全確認を実施する。安全確認の結果は記録し、環境チェックリストの写しとともに提出する。なお、隔週で提出するものとする。
7-3.危険作業の禁止
施工者は、安全衛生守則等に掲げる危険な伐木造材作業を行わない。
7-4.緊急時の措置
施工者は、施工中のケガや予期せぬ事態に備え、救急セットを常備し、事業中の注意喚起ならびに緊急時における周知手段として呼子または無線機を携行する。また、緊急時に備え安全マニュアルを整備する。
7-5.火災予防
施工者は、火災予防について万全の措置を講じる。
7-6.通行の確保
施工者は、山土場が林道や林専道、村道や国道に隣接している場合には、通行の邪魔にならないよう配慮する。
7-7.ゲート等の管理
施工者は、事業地にあるゲート類や通行止めの標示などについて、施工中も元の状態を維持する。
7-8.チェーンソーブーツの着用
施工者は、施工中のケガや予期せぬ事態に備え、作業者にチェーンソーブーツを着用させる。 なお2023年度、2024年度は移行期間とし、2025年度より仕様に含むとする。
8.環境および周辺への配慮について
8-1.自然環境および景観の保全
施工者は、現場周辺において自然環境および生態系の保全、清掃に努める。
8-2.地域住民との調整
施工者は、事業の実行にあたり、地域住民との間に紛争が生じないよう努める。
8-3.環境チェックリスト
施工者は、環境チェックリストによる環境モニタリングを実施する。環境モニタリングの結果は記録し、安全チェックリストの写しとともに提出する。
9.間伐における施工基準
9-1.間伐
発注者による特別な指示がない限り、劣勢木を中心とした定性間伐を基準とし、将来木の価値向上、公益的機能の向上を図る。
9-2.間伐率
発注者による成立本数に応じた指示がない限り、間伐率は本数率で概ね30%とする。施工区域内で間伐率に大きな差異がないよう留意する。
9-3.搬出範囲
間伐施業における搬出範囲は、作業道から25m範囲を基準とし、特に搬出が困難と認められる場合を除き、搬出範囲内の間伐材については可能な限り搬出する。
9-4.追い口切り
チェーンソーで伐倒する場合、必ず受け口をつくり、追い口切りを行う。ただし、末口14㎝未満の立木については必ずしもこの限りではない。
9-5.長級
造材において、長級は4mを標準とし、余尺は20㎝以下とする。ただし、3mで造材することで伐倒木全体としての価値が向上すると考えられる場合は、3mでの造材も検討し、発注者と協議する。
9-6.径級
造材において、径級は14cm以上を標準とする。径級14cm未満の材は施工者が処分することが可能だが、山林所有者から承諾を受けている場合に限る。
9-7.伐採点
伐採点は山側の地際を標準とする。ただし、急傾斜地においては地際から30cm以内を目安とする。
9-8.かかり木の処理
かかり木が発生した場合、作業を行った当日中に地面へ引き落とす。かかり木をやむを得ず一時的に放置せざるを得ない場合は、テープ等で周囲に目印をつけ、周辺へ誰も立ち入らないようにした上で、後日速やかに処理する。
9-9.保残木
広葉樹および枯損木については、危険がない限りは保残するよう努める。沢沿いに生育する広葉樹をどうしても伐倒しなくてはならない場合、発注者へ報告する。
9-10.残存木の保護について
施工者は、残存木に傷を付けないよう十分に注意する。施工者は、残存木にもたれ掛かった状態で搬出予定材などを一時保管することは原則として行わない。これが不可能な場合は、残存木が傷つかないように保護措置を講ずる。
10.作業道の開設および補修などに関する施工基準
10-1.路線計画
現地の地形や土質などから判断して、計画に変更が必要な場合は、発注者と協議の上で変更する。
10-2.縦断勾配
縦断勾配は18%(10°)以下となるよう施工する。地形上やむを得ない場合は、短区間において25%(14°)以下までは作設可能とする。
10-3.切土
切土高は、原則1.5m以下とし、法面勾配は6分を標準とする。ただし、岩質の場合は3分を標準とし、切土高が1.2m以下については直切りも可とする。切土側にある立木は、著しく根が露出または損壊しているなど、倒木の危険性がある場合や崩壊しやすい土質上にある場合などを除いては基本的に残し、伐開幅は最小限に抑える。また、100m間隔で、切土高の低い箇所に登り道となるスロープを山側へ設置するよう留意する。
10-4.盛土
盛土高は、原則2m以下とし、法面の勾配は1割とする。ただし、盛土高が2mを越える場合の勾配は1割2分とする。盛土内の締固めは、30㎝程度盛るごとに十分に行う。立木または根株によりそれが不可能な場合を除き、道下の立木はできる限り残し、伐開幅を最小限に抑える。
10-5.路体
路体の強度を得るため、段切段盛による30㎝程度の層ごとの締固めを十分に行う。その際、表土をしっかりと剥ぎ、路体および盛土の中に表土や枝条などの有機物を埋設しないよう留意し、キャタピラー転圧による締固めを盛土の端までしっかりと行う。
10-6.根株・枝条残材などの処理
根株や枝条残材は、路体および盛土に埋設してはならない。法面での集積処理については、木杭などを利用して落下および流出しないよう集積処理することとし、1つの集積箇所の幅が路線方向に5mに超えない状態を標準とする。集積箇所の間は必ず作業者が十分に通れる空間を設け、併せて盛土法尻が地山に接地していることを確認できるよう整地する。集積物の高さは、路面より概ね低くなるようにする。安定した緩傾斜地では分散処理も可とする。
10-7.躱し場・回転場
緩傾斜地や尾根部、差し込みの終点部では、車両のすれ違いまたは転回が可能なよう、幅員に余裕を持たせることを心掛ける。
10-8.幅員
幅員は設計幅員を基本とし、余剰は30㎝までとする。設計幅員に十分な余裕がある場合は、幅員の確保よりも切盛勾配を緩くすることを最優先に考える。ただし、前項に揚げる躱し場および回転場やヘアピンカーブ区間についてはこの限りではない。
10-9.路面排水
路面の横断勾配は水平もしくは盛土側を下げることを標準とし、こまめに分散排水されるよう心掛ける。また、一度に排水される水量をなるべく抑えることを意識する。
10-9-1.分散排水
横断排水溝などを利用して分散排水する。排水先に適した箇所がない場所では、側溝等により導水する。
10-9-2.排水位置
排水はカーブ上部の入口部分で行い、曲線部への雨水の流入は極力避ける。
10-10.横断排水溝
横断排水溝を設置する場合は、基本的に素掘り、のっこし(土盛横断排水工)、もしくは横木の設置により行う。このほか、次の点に留意する。
10-10-1.設置場所等
縦断勾配や集水の程度に応じて設置する場所および間隔をあらかじめ選定し、適切に処理する。縦断勾配が18%(10°)以上の場所については、概ね20mごとに設置する。
10-10-2.排水角度
作業道の中心線に対して25°程度の角度をつけ、切土側は高く、盛土側は低くなるように留意する。
10-10-3.横木設置
横木を設置する場合、幅員以上の長さで、径級14㎝以下の丸太を利用する。
10-10-4.洗堀対策
横断排水施設の排水先には、岩や石で水たたきを設置するなどの洗堀対策を講じる。
10-10-5.湧水処理
湧水がある場合は、その場で処理することを原則とする。
10-10-6.洗い越し
小渓流の横断には、原則として洗い越しを施工する。洗い越しの前後は、通水部が低くなるように縦断勾配を配置し、流水が路面に流出することがないように施工する。また、通水面は、水が薄く流れるように設計し、一箇所に流水が集中することがないようにする。
10-11. 丸太組工
丸太組工は、丸太組により路体を補強するものであるが、作設時の強固な締固めが必要なことに加え、丸太が不朽することを前提としているため、それを補う維持管理が重要な工法である。そのため、林地の傾斜や、通行する車両の重量に応じて、ふとんかごなどの設置も検討すること。また、開設時における丸太組工の後付けは、原則禁止とする。
10-12.線形
路線の線形は、地形に沿った屈曲線形、また、排水を考慮した波形勾配とし、できるだけ切土高を抑える。
10-13.先行伐倒
開設は、伐倒者と重機オペレーターがペアになって行い、お互いの意思が疎通できる範囲で行うことを基本とする。思わぬ障害などによりやむを得ず線形の一部を修正しなければならない場合に無駄な伐開を回避するため、支障木の先行伐倒は短区間・最小限にとどめる。
10-14.既設道
既設の道の近隣で作業をする場合や、既設の道を使用する場合は特別な指示がない限り、作業前と同様に利用できる状態を維持するよう努め、作業後は元の状態もしくは利用が容易な状態に復旧する。
10-15.公共物の保護
村道、林道、林専道および側溝などの公共敷設を損傷または損壊させないよう必要な養生措置を事前に講じる。また、当該施業で生じたバーク、枝葉、土砂などは公共施設周辺に残置せず、必ず清掃し、元の状態もしくは利用が容易な状態に復旧する。
11.切り捨て間伐等で発生した林地残材の処理について
11-1.玉切り
施工者は、搬出しない材についても枝条を切り払い、樹幹は玉切りを行う。玉切りの長さは概ね4m以内を標準とする。
11-2.ゴミ処理場所
施工者は、未利用材および枝条は林内に散らばるよう処理する。その際、なるべく地面との接地面積を大きくさせるよう処理する。ただし、洪水時の流出を防止するため、谷筋および沢付近など集水地形の場所には絶対に残置しない。
12.山土場について
12-1.運材担当者との連絡
施工者は、丸太の滞荷は最小限にとどめるように運材担当者との連絡調整を適切に行う。
12-2.はい積み
はい積みの高さは2.5m以下までとし、場合によっては立てりなどを用いて滑落防止措置を行う。ただし、周囲に住宅や人の往来がない場合は高さ3m以下まで可とする。
12-3.片付け
バーク、枝葉、土砂などは周辺に残置せず、必ず清掃し、元の状態に復旧する。
13.地拵え、植付、下刈における施工基準
13-1.地拵え、植付、下刈事業の施工基準
地拵え、植付、下刈事業の施工基準については別途特記仕様書に準ずる。